May 17, 2017

大学院で私の指導を受けたいという学生さんへ(2)入試のための勉強について

 大学院入試のためにどのような勉強をすればよいですかと聞かれることがあります.うちの大学は指導教員予定者が出す問題とそれ以外の教員が出す問題,そして人によっては外国語試験があります.試験の要綱については法学部事務室で確認してください.他の教員の出題についてはわかりませんが,出題者として私には以下のような出題傾向があります.
①基本的に自分がやっている講義内容の理解を問う.
②比較的オーソドックスな政治学の理論や概念に関する理解を問う.
③近年に発行された重要な政治学書籍についてのコメントを求める.

 だいたいこれらから1問を選択して回答を求める形式が多いです.
 ①については基本的に教科書を指定していることが多いので,そこを中心とした出題となります.②については近年よい教科書がたくさん出ていますので,そのあたりを読んでおくことで対応できると思います.私の出題分野でいうと砂原・稗田・多湖『政治学の第一歩』2015年飯田・松林・大村『政治行動論』2015年久保・末近・高橋『比較政治学の考え方』2016年粕谷『比較政治学』2014年あたりが教科書としてはお勧めです.また東京大学出版会から出されているシリーズ「日本の政治」の各巻についても目を通しておいてほしいところです.③については比較的近年に話題になった政治学の本が対象になります.


 あと試験に出すわけではありませんが,大学院入学前にぜひぜひ読んでおいてほしい本としては富永健一『現代の社会科学者』があります.この本に書かれている実証主義と理念主義の問題は現在の政治学においても切実です.学部生が読んですぐわかるような本ではないかもしれませんが,何度も読み返す価値のある本です.大学の教員としてリサーチ・メソッドの指導を学生にする際に,この本に書かれてある知識は本質的に重要だと思います.

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大学院で私の指導を受けたいという学生さんへ(1)ほんとにうちの大学院で,私でいいですか?

「大学院で先生の指導を受けたいです」と言ってくださる学生さんがたまにいらっしゃいます.研究者冥利に尽きることであり基本的に歓迎です.ただ,研究者としての就職の大変さは昨今の大学をめぐる情勢からも明らかであり,安易に研究者としての道を進めることはためらわれます.幸いにして私の勤務先である関西学院大学法学研究科は,修士学位取得をした上で,公務員や民間企業に職を得ておられる事例も多く,そういう方向けのコースをエキスパート・コースとして用意しています.なので研究者になる気はないけどもう少し勉強したいな,という方にはこちらのコースをお勧めします.

 一方,研究者を目指す方のためにはアカデミック・コースが用意されています.基本的には課程修了して博士学位を取得,研究職を目指すわけですが,学位取得から就職までの期間が長期化することも珍しくありません.そのような現状を踏まえてなお,研究者の道を目指そうという方を応援したいと思い,このような文章を書くことにしました.

 研究者としての就職を考える場合,有利なのはやはり多くの研究者を輩出している大学院ということになろうかと思います.なぜなら先輩から多くの情報を得られるからです.そういう意味ではやはり老舗の研究重視の大学は強いように見えます.政治学系で私に近い分野ですと今なら早稲田大学の政治学研究科神戸大学法学研究科がよいように見えます.なぜならいずれもコースワークなどもしっかりしており,近年も継続的に若手研究者を輩出しているからです.たとえば早稲田の政治学研究科であれば,「政治学研究方法」という科目が「経験」「数理分析」「規範」と3種類用意され,いずれも定評ある研究者によって開講されています.そういう大学院を本命にして私のところを滑り止めにするというのも立派な戦略ですし,それはそれで結構かと思います(現研究科副委員長としてはつらいところですが).

 しかしまあそういう大学院に不幸にして合格せず,本学にお見えになることもあろうかと思います.その場合は当方として最善を尽くさせていただくまでです.幸いにして関西の政治学コミュニティは横のつながりが強く,院生がどこの大学院にいようと育てていく雰囲気があります.学内学外を問わず研究交流の機会をぜひ生かしていただきたいと思います.
 
  さて指導教員を私にとおっしゃってくださるのは大変うれしくありがたいことですが,あなたは私の研究をどれくらい読んでくださっているでしょうか?私から何を学ぶかについて具体的な考えを持っていますか?可能であれば私が書いた論文はできるだけ読んでください.その上で研究者としての私の長所と短所を把握するように努めてください.近い分野を研究している他の研究者とも比べてみてください.その上でやはり私を選ばれるのであれば,ぜひいらしてください.その場合,大学院受験に先立って私と面談の機会を持ちましょう.その際に私の人物をぜひ確認してください.好かないタイプの人間を指導教員にすることは不幸です.私の言動に気になるところがある場合,私を選ばない方がいいかもしれません.また受験前に本学の研究環境を確認する上でも直接足を運ぶ機会を作ることを薦めます.現在私が指導する院生には修士課程1年目,2年目の院生がいますので,彼らを紹介することもできます.

 というわけで今回はここまで.大学院選び,指導教員選びは一生に関わるのでどうぞ慎重に.

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大学院で私の指導を受けたいという学生さんへ:まえがき

 大変ご無沙汰しております.この春より関西学院大学法学研究科副委員長というものになりました(任期は2年).ここは内部進学者もいますが,外部受験も少なからずいます.内部からの進学は情報を得やすいので,ここでは他大学からうちの大学院に来て私の指導を受けることを検討するという一部マニアックな学生さんのために情報を出してみようかと思います.長くなることが予想されるので,段階的にちょぼちょぼとやっていきます.
 なお過去に指導教員の選び方についてはこのブログで書いていますので,そちらもご参照いただければ幸いです.

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April 01, 2013

『民主制のディレンマ』改訂版発行と新旧対照表

 おかげさまをもちまして拙訳書アーサー・ルピア=マシュー・D・マカビンズ『民主制のディレンマ』(木鐸社)の改訂版を出すことができました.これもひとえにご購入いただいた皆様のおかげと心より御礼申し上げます.私はこの本を教科書として講義をしてきましたが,その過程でいろいろと誤植などに気付くこととなりました.これにより読者の皆様には大変ご不自由,ご迷惑をおかけしましたことをあらためて深くお詫び申し上げます.
 改訂にあたってはこれら気づいた点を修正しましたが,旧版をご愛顧くださった方々のために,新旧対照表を用意いたしましたので,ご利用いただければ幸いです.「20130401.pdf」をダウンロード

 またお気づきの点等ございましたらお知らせいただければ幸甚に存じます.

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January 01, 2011

謹賀新年

 あけましておめでとうございます.今年もどうぞよろしくお願いいたします.ここ数年,某行政職についておりまして,思うように研究に時間を割けないでおりましたが,来年度1年間特別研究期間をいただけることになりました.これを機にもう1度自分に鞭を打って,研究に精励したいと思っていますので,今後ますますのご指導ご鞭撻を心からお願い申し上げます.
 昨今の情勢は政治,経済,社会どれをとっても厳しいものがあり,その波を職場においても痛感する日々ですが,その中で学問に専心できる時間を頂けるわけですから,頑張って充実したものにしたいと思います.
 とりあえずのタスクとしては,JES4プロジェクトが最終年度に入りますので,まずはそのアウトプット.そしてそれ以外にも加えていただいているプロジェクトにできるだけ貢献していきたいと思います.また5月には職場で選挙学会の大会を開かせていただきます.お越しいただける方にとって快適で有意義な大会となるべく,微力を尽くす所存です.
 もっとも某行政職の任務も年度内は続きますので,これも後任の方へのスムーズな引き継ぎを目指して仕事を整理していかねばなりません.
 より直近には,1月6日からのSouthern Political Science Association(アメリカ南部政治学会)大会に参加して,拙い内容で汗顔ものですが報告をしてきます.他にも参加される日本人研究者の方もおいでなので,現地ニュー・オーリンズで新年会もしようと思っています.

 というわけであらためまして本年もどうぞよろしくお願い申し上げます.

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September 24, 2010

指導教員選びについて

 twitterでも少しつぶやいたけれど,ゼミや指導教員の選択は特に大学院志望者にとっては重要な問題だ.いろいろな基準がありえて,中には自分が後継者として残れるかどうかなんてことを判断するツワモノもいると聞いてはいるけれど,研究者として仕事を頂ける自信もなかった自分はとてもそんな大それた基準では選べなかった.
 大学2年の頃,ミクロ経済学の勉強会に入れてもらった際に指導していただいた先生(経済学者)からは.「指導教員の選択は学生の能力の問題だ」となんども言われていた.それはそのとおりだと思ったので,自分が大学院を志望するにあたり,どの先生にお願いに上がるかはかなり真剣に考えたし情報を集めた.
 そのために自分がやったことは,(1)その先生の書いたものは出来る限り読む,(2)講義にはできるだけ出てその先生の人となりを感じる,(3)同僚の先生方とその先生の人間関係をできるだけ把握する,(4)その先生がもっている学外の研究者との人間関係を把握する,(5)自分の判断が正しいかどうかを,個人的に信頼している別の先生(勉強会で面倒を見てもらった先生)に尋ねる,といったものだった.
 もっとも最後の(5)については,ひとりに絞らずに尋ねたので答えは「どの先生についても大丈夫だと思う」というもので,最終的には自分で判断した.最終的な判断基準はどの先生の指導に,自分として最も抵抗なく素直に従えるかという感触だった.
 なお教員から助言をもらう際にそれに素直に従おうとせずに,その場で反論するのはあまりプラスにならない.向こうだって人間なので助言しやすい学生だと思ってもらったほうがいい.助言されたらとりあえずそのとおりやってみて,その結果を即フィードバックしたほうが,その後の師弟関係は円滑にいくとおもう.

 教員を学生が選ぶのは当たり前という文化の高校で過ごしたことも大きいかもしれない.3年生になって自分の受験にとって重要な科目でいい先生に当たらなかったと感じた生徒は,ただちに別の先生に補講をしてもらうための署名活動を開始した.その紙はクラスを超えて回ってくる.署名が集まったところで生徒はそれを持って指導力に信頼のおける先生のところに行き,「これだけの生徒が先生の補講を希望しているのでお願いします」と依頼しに行く.いろいろな科目でそれをやっていて,そのことに大変感動した覚えがある.今でも我が母校にそういう文化は残っているのだろうか?
 いずれにせよそういうバックグラウンドがあったので,「先生を選ぶのは学生の能力の問題」という言葉も抵抗なくまっすぐに入ってきた.
 自分が大学生活を送った環境が,教員と身近に接する機会が多かったという利点はあったと思う.だから内部進学を選んで,他の大学院を一切受験しなかったということもある.今いる大学と別の大学院への進学を選ぶなら,指導教員になってもらいたい候補者の先生について書かれたものをやはり一通り読むのはもちろん,周辺情報を集め,できれば直接面会を求めるのがいい.その先生の接し方や,価値観などを直接肌で感じ取るというのはやはり重要だ.直接面会を求めるということはcostly effortなのでその学生の真剣さを伝えるシグナルになる.それなしに直接受験して指導教員希望者として自分の名前が上がっているときには,この人どれくらい真剣なのかとか,自分のことをどれだけわかった上で指導教員になっているのかわからないので,面接でその辺りをゆっくりきくことになる.
 うちの院試は次また3月にあるのかな?受験していただけるのはありがたい事です.

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August 12, 2010

夏休みに伴う不都合さまざま

 夏休みこそさあ研究だぁと思うところをくじかれています。研究室のある建物が耐震工事やエレベータの入れ替え工事などで日中騒音と埃がすごい。おまけに資料室は使えないし。まあ最近は電子ジャーナル化がすすんでいるとはいえ、資料室所蔵の図書資料は使えません。
 またメール・サーバもメインテナンスなどの関係でお休み期間があります。今年は8月15日から18日の4日間。
 まあ仕方ないのかもしれませんが、不自由ですねぇ。よその大学ではフル稼働しているのでしょうか。メール・サーバなんて2重化するなりして、途切れることがないようにできないもんでしょうかね。ヤレヤレです。
 

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June 08, 2009

えらいご無沙汰でした

 先月,おかげさまでかねて懸案の本を出すことができました.読んでいただけますと嬉しいです.
http://shop.ohfu.co.jp/i-shop/product.pasp?cm_id=169087&to=pr

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October 15, 2008

最近最も嬉しかったこと

 おかげさまで2008年の日本政治学会大会は無事3日間の日程を終了しました。関係各位のご協力に心から感謝しています。もっとも会計報告作成がまだ残っているので、自分の中では終わっていないのですが。なのでタイトルにあるのは学会のことではありません。

 一番うれしかったのは以下の記事に記してあることなのです。
http://kgfighters.sblo.jp/article/21056847.html
 この幸田君、私のゼミのメンバーなのです。彼が活躍したゲームを見に行けなかったことは生涯の不覚ですが(不覚の多い生涯ですいません)、彼が積み重ねてきた努力がゲームで実ったことが嬉しくて仕方ありません。またチームは試合に出ている人間だけではないということも、彼の日常の姿勢から教えてもらいました。今年もアメフトは楽しみです。
 今週末はなんとかゲームを見に行けそうなので、スタンドから応援したいと思います。

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March 06, 2008

2008年度政治学会大会開催校関連情報

 業務連絡です^^;;。今年2008年の日本政治学会大会・研究会は関西学院大学上ヶ原キャンパスにおいて10月11日から10月13日まで開催される予定です。
 とりあえず粗末な作りですが、開催校からの情報を以下のサイトにおいて提供しておりますので、お役にたてば幸甚です。

http://homepage3.nifty.com/myamadakg/JPSA08KG-index.html

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